【特定技能受入れガイド 第5回「雇用契約書・支援計画書の作成ポイント」】

はじめに

採用する人材が決まったら、いよいよ書類の作成です。特定技能の受入れでは、通常の雇用契約書に加えて「支援計画書」という特有の書類を作成する必要があります。

ここで最初に押さえておきたい大切なことがあります。雇用契約書と支援計画書は、在留資格申請の審査で最も重要視される書類です。内容が不十分・不正確と判断された場合、申請は不許可となります。国内在留者であれば在留資格の変更ができず、海外からの招へいであればそもそもビザ申請自体ができません。「とりあえず書いて出す」ではなく、丁寧に・具体的に・最新様式で作成することが、受入れ成功の第一関門です。

この回では、それぞれの書類で何をどう書けばよいのか、担当者が最初に知っておくべきポイントを整理します。

 


❶ 雇用契約書と雇用条件書 ── 2つセットで作る

特定技能の雇用契約は、「雇用契約書(参考様式第1-5号)」と「雇用条件書(参考様式第1-6号)」の2つをセットで作成します。どちらも出入国在留管理庁の公式ホームページからダウンロードできます。自社独自の様式を使うこともできますが、その場合は参考様式に定められた記載事項をすべて網羅する必要があります。

雇用契約書(参考様式第1-5号)に書くこと

雇用契約書は、会社と外国人材の間で「特定技能として雇用する」ことを確認する書類です。主に以下の内容を記載します。

  • 雇用する会社の名称・所在地
  • 外国人材の氏名(パスポートと同じアルファベット表記)
  • 特定技能雇用契約を締結する旨、および在留資格が失われた場合に雇用が終了する旨
  • 双方の署名(外国人材の署名は本人の直筆が必須)

※署名は必ず本人の直筆でなければなりません。代筆やスタンプは認められません。

雇用条件書(参考様式第1-6号)に書くこと

雇用条件書は、具体的な労働条件をすべて書き込む書類です。次の項目を細かく記載します。

  • 雇用期間(開始日・終了日・更新の有無)
  • 勤務場所と従事する業務の内容
  • 労働時間・休憩・休日・休暇
  • 賃金(基本給・各種手当・控除項目・支払方法・支払日)
  • 退職・解雇に関する事項

賃金は口座振込が必須です。現金手渡しは認められていません。これは外国人材の保護のためのルールです。

よくある不備のポイント

申請時に差し戻しになりやすいのは次の3点です。

賃金が「日本人と同等以上」になっていない 同じ職場で同種の業務に就いている日本人と比べて、報酬額が同等以上でなければなりません。これは審査で最も厳しくチェックされる項目のひとつです。比較対象となる日本人がいない場合は、その理由の説明書も必要になります。

業務内容の記載が申請する在留資格の区分と一致していない 「飲食料品製造業」の区分で申請するにもかかわらず、雇用条件書の業務内容に「接客業務」と書いてある、といったズレがあると補正を求められます。業務区分と完全に一致する記載にしましょう。

外国人が理解できる言語で作成・説明していない 雇用契約書・雇用条件書はいずれも、日本語と外国人が理解できる言語(母国語等)を併記した書類を用意し、内容を十分に説明したうえで署名をもらう必要があります。入管庁のホームページでは、ベトナム語・インドネシア語・タガログ語など10言語の翻訳版様式が無料配布されています。


❷ 支援計画書 ── 審査の核となる

支援計画書(参考様式第1-17号)は、特定技能1号に特有の書類で、外国人材の仕事上・日常生活・社会生活を支援するための具体的な計画をまとめたものです。

冒頭でもお伝えしたとおり、支援計画書の内容が審査をクリアしなければ在留資格は許可されません。国内在留者は在留資格の変更ができず、海外からの招へいでは在留資格認定証明書が交付されないためビザ申請自体ができません。雇用契約書と並んで申請の成否を左右する最重要書類と認識してください。

支援計画書には10項目の義務的支援をすべて記載しなければなりません。2025年4月からは新たに「地方共生施策への協力確認」の記載欄も追加されています。

10項目の義務的支援の概要

  支援項目 具体的なイメージ
1 事前ガイダンス 入社前に日本の生活・ルールを母国語で説明(目安3時間程度)
2 出入国時の送迎 空港への出迎え・帰国時の見送り
3 住居確保・生活用品の手配 物件探しの同行、保証人への就任など
4 生活オリエンテーション ゴミの出し方・交通ルール・緊急時の対応などを説明
5 公的手続きへの同行 市役所(住民票・健康保険・年金)への同行
6 日本語学習の支援 日本語学習ツールの紹介・学習機会の提供
7 相談・苦情への対応 外国人が理解できる言語で相談を受けられる体制の整備
8 日本人との交流促進 地域行事・自治会活動への参加案内など
9 転職支援(自己都合以外の離職時) ハローワークへの案内・推薦状の作成など
10 定期的な面談の実施 3か月に1回以上、外国人材と上司の双方と面談し報告

 

 

支援計画書作成の最重要ポイント

支援計画書で最も大切なのは、「誰が・いつ・どのように実施するか」を具体的に書くことです。「必要に応じて対応する」「適宜サポートする」といった曖昧な記載では審査を通りません。

たとえば「空港への送迎」であれば、「○○空港にて総務担当の○○が出迎え、会社の車で○○へ移動する」というレベルの具体性が必要です。「相談・苦情への対応」であれば、「ベトナム語対応可能なスタッフ○○が毎週○曜日に面談時間を設ける」など、実施方法・担当者・頻度まで明記することが求められます。

また、支援計画書は日本語と外国人材の母国語を併記して作成し、外国人材本人の直筆署名を得る必要があります。

「自社支援」か「登録支援機関への委託」かを決める

支援の実施は、自社で行うか、登録支援機関に全部委託するかを選択します。

  • 自社支援:担当者を選任して自社で実施。コスト削減になる反面、準備と継続的な運用に時間と手間がかかります。支援担当者には一定の要件(過去2年以内に外国人の生活相談等に従事した経験など)が求められます。
  • 登録支援機関への全部委託:専門機関に任せることで支援体制の基準を満たしたとみなされます。委託料の目安は1名あたり月額2〜4万円程度。初めての受入れであれば、このルートが安心です。

どちらの方法を選ぶにせよ、支援計画書の作成自体は会社が行う義務があります。全部委託する場合でも「登録支援機関に委託する」旨と委託先の情報を支援計画書に記載する必要があります。支援計画書の内容に不安がある場合は、行政書士などの専門家にご相談ください。


❸ 書類作成全体の注意点

様式は必ず最新のものを使う

特定技能の書類様式は、制度改正にあわせて定期的に更新されます。2025年4月以降は「地域の共生施策への協力」に関する項目が追加された新様式が必須となっており、旧様式では受理されません。出入国在留管理庁のホームページから常に最新様式をダウンロードして使いましょう。

書類間の整合性を必ず確認する

雇用契約書・雇用条件書・支援計画書は、記載内容が互いに一致している必要があります。特に賃金額・業務内容・勤務場所・雇用期間の4点は3つの書類すべてで矛盾がないように確認しましょう。1か所でも食い違いがあると補正を求められ、審査が大幅に遅れることになります。


この回のまとめ

  • 支援計画書は在留資格申請の審査で最重要視される書類。内容が不十分であれば申請は不許可となり、国内在留者は資格変更できず、海外招へいの場合はビザ申請自体ができない
  • 雇用条件書の賃金は「日本人と同等以上」「口座振込」が必須。業務内容は申請する在留資格の業務区分と完全に一致させること。すべての書類に母国語併記と本人直筆署名が必要
  • 支援計画書の各項目は「誰が・いつ・どのように」という具体的な記載が必須。曖昧な表現では審査を通らない

次回予告

第6回「在留資格申請の流れと必要書類一覧」

書類の準備が整ったら、いよいよ出入国在留管理局への申請です。申請の種類・提出先・審査期間の目安・オンライン申請の活用法まで、手続き全体の流れをわかりやすく解説します。